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2024年4月1日施行民法改正:嫡出推定制度の見直し等について弁護士が解説

2024年4月1日に、民法の嫡出推定制度が見直され、これに伴い、複数の民法上の制度が改正されました。
本稿では、改正前の制度はどのようなものだったのか、改正前の制度にはどのような問題があったのか、そしてどのような改正がなされたのかについて解説していきます。

1 改正前の制度とそれによる問題点

先にも述べた通り、2024年4月1日付で、民法の嫡出推定制度が改正されました。
改正されたのは嫡出推定制度だけではなく、これに付随して、女性の再婚禁止期間制度、嫡出否認の訴えの制度も改正されています。
そこでまず、このパートでは、これら3つの制度が従前どのような内容のものだったのか、そして、これらの制度により、どのような社会問題がもたらされたのかを解説します。

1-1 改正前の制度

1-1-1 嫡出推定制度

嫡出推定とは、生まれた子の父が誰であるかを法律上早期に確定して子の利益を図ることを目的とする制度です。
改正前は、婚姻の成立した日から200日を経過した日より後に生まれた子又は婚姻を解消した日から300日以内に生まれた子は夫の子と推定されていました。

1-1-2 女性の再婚禁止期間

女性の再婚禁止期間は、民法制定当時から長期間、離婚後6か月とされていました。
しかし、この再婚禁止期間について、平成27年12月、最高裁において100日を超える再婚禁止期間は違憲であるとの判断が下されました。そこで、この判決を受けて、平成28年6月1日に、民法が改正され再婚禁止期間が100日に短縮されました(施行は同年7月1日から)。
以降、2024年4月1日の改正まで、女性の再婚禁止期間は100日とされていました。

1-1-3 嫡出否認の訴えの提訴権者と出訴期間

嫡出否認制度とは、婚姻中や離婚後300日以内に生まれた子どもとの親子間を否定する制度です。
従来は、戸籍上の父親のみに家庭裁判所への申立をする権利が認められており、出訴期間も1年に限定されており、子どもや母親には嫡出否認の訴えを起こす権利は認められていませんでした。

1-2 改正前制度によって生じた問題~子どもの無戸籍問題

以上のような制度により生じたのが子どもの無戸籍問題です。
女性が夫と離婚する前に他の男性と性交渉を持っていると、離婚後300日以内に子どもが生まれる可能性がありました。そして、実際にそのような事象が生じることも少なくありませんでした。
この場合、旧制度の下では、夫と離婚して子どもの実の父親と再婚しても、法制度上は元夫との子どもと扱われざるを得ませんでした。
そこで、子どもの戸籍上の父親が元夫となるのを回避するために、子どもの母親が、子どもの出生届を提出しないという事態が少なからず発生したのです。出生届が出されないのですから、その子供は無戸籍になってしまいます。
無戸籍になると、以下のような問題が発生します。

ア 運転免許やパスポートを取得できない
イ 銀行口座を開設できない
ウ 家を借りることができない
エ 選挙権を行使できない
オ 進学や就職に不便が生じる

このようなケースが多発して社会問題化し、2024年4月1日の法改正が行われることとなりました。

2 改正後の制度

2-1 嫡出推定制度の見直し

嫡出推定制度については、婚姻解消の日から300日以内に生まれた子どもであっても、母が前夫以外の男性と再婚した後に生まれた場合には、再婚後の夫を父とする出生の届出が可能となりました。

2-2 女性の再婚禁止期間の廃止

そもそも、女性の再婚禁止期間は、子どもの父親が誰かを明らかにするために設けられた制度で、嫡出推定制度と結びついたものでした。
先に見たように嫡出推定制度が見直され、再婚後に生まれた子については、前婚の離婚後300日以内に生まれた子は現夫の子と推定されるようになったため、再婚禁止期間を据え置く必要がなくなりました。 そこで、2024年4月1日の民法改正により、女性の再婚禁止期間そのものが廃止されました。

2-3 嫡出否認の訴えの提訴権者の拡大・出訴期間を伸長

上記の2つの法改正に伴い、嫡出否認の訴えについても改正がなされました。
まず、従来、父にしか認められていなかった提訴権が、子ども、母、母の前夫にも認められるようになりました。
提訴期間も伸長され、父と前夫は子の出生を知ったときから3年、子と母は出生の時から3年とされました。
柔軟に嫡出否認の訴えが認められるようになり、実際には血縁関係のない父子の親子関係を断ちやすくしたことは、間接的ではありますが、子どもの無戸籍問題の回避に資するといえるでしょう。

3 まとめ

従前の嫡出推定制度は、柔軟さに欠ける硬直的な制度であったため、その不利益を解消しようとすると、かえって、子どもに不利益が大きい出生届の未提出、さらには無戸籍という問題を生じることとなりました。
子どもの無戸籍問題を解消しようと、この度、嫡出推定制度の改正、これに付随して、再婚禁止期間の廃止、嫡出否認の訴えの制度の改正がなされました。
子どもの父が誰であるかを確定する手続は従前に比べて相当程度柔軟になったといえます。
今回の制度改正により、子どもの無戸籍という社会問題が早期に解消されることが望まれます。

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