ムチウチについて
ムチウチ症は、交通事故に遭われた際によく問題となる症状です。交通事故に遭った際に、首が鞭がしなるような状態になるのでむちうちと呼ばれています。ただし、医学的にはむちうちという言葉はなく、診断名としては「外傷性頸部症候群」「頸部捻挫」とされることが多いです。
ムチウチと症状
症状は首や首から肩にかけての痛み、頭痛・吐き気・めまいなどです。
ムチウチの分類
ムチウチには以下5つの分類があります。
(1)捻挫型=警部周辺の筋肉や靱帯の軟部組織の炎症
傷病名は、頚部捻挫、外傷性頚部症候群等と記載されます。
主症状は、頚部痛と頚部運動制限です。
受傷後3ヶ月以内に後遺障害を残すことなく治癒することが多く、軟部組織の炎症にとどまるものは、後遺障害の対象となりません。
(2)神経根症型=脊髄から枝分かれをした末梢神経である、神経根に障害を残すもの
傷病名は、頚部捻挫、頸椎挫傷、外傷性頸部症候群、頸椎神経根症、頸椎椎間板ヘルニア等と記載されます。
主症状は、左右いずれかの肩~手指にかけて重さ感、だるさ感、痛み、しびれ等です。
神経症状として後遺障害の対象となります。
(3)バレ・リュー型=交感神経の損傷を原因とする自律神経失調症状を示すもの
倦怠感、疲労感、熱感、不眠、脱力感、目眩、耳鳴り、難聴、眼精疲労等等、種々の症状がでます。
治療先は、整形外科ではなくペインクリニックか麻酔科ですので注意してください。
後遺障害が認められにくい症状です。
(4)(2)と(4)の混合型
傷病名は(2)と同様です。
症状は、上肢~手指のしびれに加えて、不眠、目眩、耳鳴り、難聴、頭痛、吐き気等のバレ・リュー症状が出ます。
整形外科とペインクリニックの並行治療となります。
(2)の症状があるため、後遺障害の対象です。
(5)脊髄症型、脊髄症状を示すもの
傷病名は、脊髄不全損傷、頸椎椎間板ヘルニア、変形性頸椎症、頸髄症、脊柱管狭窄症、後縦靱帯骨化症等、色々あり、難治性です。
ムチウチの治療
- 受傷後3週間:急性期で種々の症状が出ます。この時期の治療は、安静と内服が中心で、点滴・静脈注射は不要です。通院は1,2回/週です。
- 受傷後4週間:理学療法が開始される頃です。真面目にリハビリ通院を続け、理学療法を受けます。
- 受傷後6ヶ月間:症状固定段階です。治療先で後遺障害診断を受けます。
ムチウチと後遺症
- 14級9号:局部に神経症状を残すもの
目立った他覚的所見はないが、神経系統の障害が医学的に推定されるもの
外傷性の画像所見は得られないが、自覚症状を説明する神経学的所見が認められる - 12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
他覚的検査により神経系統の障害が証明されるもの
自覚症状に一致する外傷性の画像所見と神経学的所見の両方が認められるもの
上記2つがムチウチの後遺障害等級です。
ムチウチは外傷性所見が年齢による変性とみなされることや、過去に”ムチウチ症撲滅運動”もあった経緯があり、後遺障害等級認定が問題となりやすい症状です。
ムチウチの検査
多くの被害者の方は、自宅や勤務先に近い、という理由で治療先を選択していますが、主治医が頼りなければ、早めに医大系の脊椎外来に行き、専門医の診察を受けてください。
MRI、XP上の画像所見での立証が難しいため、以下の神経学的検査を受けておくことをお勧めします。
- スパーリング、ジャクソンの神経根誘発テスト
- 筋萎縮検査
- 深部腱反射テスト
他にも神経学的検査は多数有りますが、多忙な主治医の手間を省くことも必要な努力です。
まとめ
ムチウチは、良く聞く言葉ではあり、その症状に悩んでいる方は多くいらっしゃいますが、現実的に、後遺障害の認定を得るには上記のように非常に難しい問題があります。
後遺障害認定の資料は医師が記載する診断書であり、弁護士が医師の行為に介入することは当然ながら出来ません。しかし、被害者の方に対して、検査・治療を受ける上でのアドバイスは可能です。
交通事故に遭った北九州市、中間市、遠賀郡の方は、お早めに当事務所にご相談ください。