交通事故の過失割合に納得できないときの考え方と対処法|北九州の弁護士が解説

保険会社から示された過失割合を見て、「自分にこんなに責任があるはずがない」と納得できずにいる方は少なくありません。

結論からお伝えすると、保険会社が提示する過失割合は、あくまで実務上の基準をもとにした提案であり、法的な拘束力があるわけではありません。

保険会社は、事故状況を類型で区分して、過去の裁判例を元にした標準的な過失割合に基づいて過失割合を提示することが一般的です。

しかし、個別の事故における細かな事情や修正要素が十分反映されていないこともあります。ドライブレコーダーの映像や実況見分調書などの客観的な証拠によっては、交渉や手続きを通じて過失割合が見直される可能性があります。

この記事では、交通事故の過失割合の決め方、保険会社から提示された割合に納得できないときの考え方、具体的な対処法について、弁護士がわかりやすく解説します。

そもそも過失割合とは?誰がどう決めるのか

過失割合とは、起きてしまった交通事故について、当事者それぞれの「責任の重さ」を数字(パーセント)で表したものです。

たとえば「8対2」といった形で示され、これは被害者が受け取れる賠償金の額に直接影響します。

仮に損害額が1,000万円と認められても、被害者側に2割(20%)の過失があると判断されれば、受け取れる金額は800万円に減ることがあります。これを「過失相殺(かしつそうさい)」といい、自分の過失の分だけ賠償金が差し引かれる仕組みです。

誤解されやすいのですが、過失割合は、加害者側の保険会社が一方的に決める権利を持っているわけではありません。

実務では、過去の膨大な裁判例を整理した基準を目安に、当事者同士の話し合い(示談交渉)で決めていきます。話し合いがまとまらず裁判になった場合は、最終的に裁判所が事実と証拠を総合的に判断して決定します。

>過失割合は最終的な示談金額を大きく左右します

過失割合は「過去の裁判例(別冊判例タイムズ)」を基準に決まる

過失割合の決定方法には、実務的な基準があります。

裁判実務や示談交渉において、過失割合の土台として広く使われているのが、裁判官などが編集した『別冊判例タイムズ39号』という基準書です。

この基準書では、事故のパターンごとに「基本となる過失割合」が細かく定められています。

たとえば、次のような事故類型です。

  • 信号機のある交差点での直進車同士の事故
  • 横断歩道を渡る歩行者と右折車の事故
  • 駐車場内での接触事故
  • 追突事故
  • 右折車と直進車の事故

このように、事故の状況を類型化したうえで、「このパターンであれば基本は何対何」といった出発点が示されています。

共通の基準を使うことで、同じような事故について大きく結論がぶれないようにし、公平で迅速な解決を図っているのです。

過失割合を変える「修正要素」とは

もっとも、基準に書かれている割合は、あくまで基本的な過失割合です。

実際の事故では、事故現場の具体的な状況や、当事者の特別な事情によって、この数字が調整されることがあります。これを「修正要素」と呼びます。

修正要素は、大きく分けて「運転者の落ち度」と「事故現場の状況・当事者の立場」の2つの観点から検討されます。代表的なものを、具体例とともに見ていきましょう。

「著しい過失」と「重過失」とは

相手(または自分)の不注意が通常より重い場合、「著しい過失」や「重過失」として、過失割合が修正されることがあります。

著しい過失は、本来求められる注意を大きく怠ったといえるケースで、おおむね10%程度の修正の目安とされることが多いです。たとえば、次のような事情が挙げられます。

  • 時速15km以上30km未満の速度超過
  • 著しい前方不注視(わき見)やハンドル操作の誤り
  • 携帯電話・スマートフォンの通話や操作をしながらの運転
  • 酒気帯び運転、バイクのヘルメット未着用 など

重過失は、著しい過失よりさらに悪質で、重大な不注意といえるケースです。おおむね20%程度の修正の目安とされることが多く、次のような事情が該当します。

  • 時速30km以上の大幅な速度超過
  • 酒酔い運転(正常な運転ができない状態)
  • 無免許運転、居眠り運転、薬物の影響下での運転 など

夜間・横断歩道・道路の状況による違い

事故が起きた場所や時間帯、当事者の立場によっても、過失割合は変わってきます。

  • 夜間の事故:視界が悪くなるため、歩行者や自転車の側に5%程度の不利な修正がなされることがあります。ただし、車側にライトの消灯などの落ち度があれば、逆に車側が不利に修正されることもあります。
  • 横断歩道の有無:横断歩道上での事故では歩行者が強く保護され、車側の過失が重く見られる傾向があります。反対に、横断歩道のない場所や、車の直前・直後を横断したような場合は、歩行者側に不利な修正が働くことがあります。
  • 道路の状況:交通量の多い「幹線道路」か、住宅街・商店街などの「生活道路」か、歩道と車道の区別があるかなども考慮されます。
  • 交通弱者の保護:被害者が幼児・児童・高齢者・身体障害者などの場合、車側により重い注意義務が求められ、被害者側の過失が5%〜10%程度、有利に修正される傾向があります。

これらの要素を組み合わせ、基本の割合から5%〜20%程度の幅で増減させて判断するのが一般的です。

ただし、修正要素の有無や調整される幅は事故の類型ごとに異なり、「この事情があれば必ず何%動く」と決まっているわけではありません。 また、修正要素を認めてもらうには、ドライブレコーダーの映像や調書といった客観的な証拠による裏づけが重要になります。「相手はスピードを出していた」と訴えても、それを示す資料がなければ、相手が否定した場合にはそれ以上動かすことが難しいのが実情です。

なぜ保険会社の提示する過失割合は被害者に不利になりがちなのか

交通事故の示談交渉において、加害者側の任意保険会社は、加害者側の立場で被害者と交渉を行います。そのため、保険会社から提示された過失割合が、必ずしもその事故に最も適した割合とは限りません。

また、保険会社は多くの交通事故案件を扱っているため、実務上の基準に沿って、定型的に過失割合を提示することがあります。しかし、実際の事故では、道路状況、見通し、速度、信号のタイミング、相手の運転態様など、細かな事情が重要になることも少なくありません。こうした個別事情が十分に反映されていない場合、本来よりも被害者側の過失が大きく見積もられている可能性があります。

さらに、被害者側が有利な事実を証拠で示せていないと、その事情が交渉で考慮されにくくなります。たとえば、「相手がかなりスピードを出していた」「相手が前を見ていなかった」と感じていても、ドライブレコーダーの映像や実況見分調書などの裏づけがなければ、過失割合に反映されにくいことがあります。

そのため、保険会社から提示された過失割合に納得できない場合は、すぐに合意せず、事故状況や証拠を確認することが大切です。

過失割合に納得できないときの3つの対処法

過失割合に納得できないときは、感情的に「おかしい」と伝えるだけでなく、次の3つのステップで対応することをおすすめします。

①証拠を集める(ドライブレコーダー・実況見分調書)

まずは、事故の状況を客観的に示す資料を集めましょう。

代表的なものが、ドライブレコーダーの映像と、警察が作成する実況見分調書などの記録です。これらは、事故時の位置関係や信号の状況、スピードなどを裏づける有力な材料になります。警察が作成する実況見分調書などは、弁護士に依頼することで取得することができます。

特にドライブレコーダーの映像は時間が経つと上書きされてしまうことがあるため、早めに保存しておくことが大切です。

②修正要素を主張する

集めた証拠をもとに、自分のケースにあてはまる修正要素がないかを検討します。

「相手に速度超過があった」「相手がわき見をしていた」といった事実を具体的に指摘することで、当初の提示よりも過失割合が見直される可能性があります。

③弁護士に交渉を依頼する

過失割合の判断には、基準書の読み方や修正要素のあてはめなど、専門的な知識が求められます。

ご自身での交渉に不安がある場合は、弁護士に依頼することで、適切な基準にもとづいた主張がしやすくなります。交渉がまとまらない場合には、ADR(裁判外の紛争解決手続き)や裁判といった手段を検討することもあります。

>交渉が長引くケースもあります

同乗者・歩行者など立場による過失割合の違い

過失割合の基準は、「交通弱者を守る」という考え方を大切にしています。一般に、四輪車よりバイク、バイクより歩行者が保護され、歩行者や自転車が被害者の場合は、車同士の事故に比べて過失が低めに見られる傾向があります。

ただし、「歩行者だから過失はゼロ」と決まっているわけではありません。歩行者側にも、次のような事情があれば一定の過失が認められることがあります。

  • 横断が禁止された道路を無理に渡った場合
  • 信号や横断歩道のない場所を、左右の安全確認をせずに横断した場合
  • 停車中の車の間などから急に飛び出し、運転者が避けきれなかった場合

同じように、同乗者として事故にあったときも注意が必要です。

同乗者自身にハンドル操作の落ち度がなくても、運転していた人が配偶者や家族など「身分上、生活関係上、一体をなすとみられるような関係」にある場合、その運転者の過失が考慮され、同乗者が受け取れる賠償額が減ることがあります。これは「同乗者が悪い」という意味ではなく、損害額の計算上、身近な運転者の過失が反映される、という考え方です。

>車に同乗していた場合の過失割合については別記事で解説しています 

過失割合の交渉を弁護士に依頼するメリット

過失割合に納得できないとき、弁護士に依頼することには次のようなメリットがあります。

ひとつは、裁判実務で使われている基準にもとづいた主張ができることです。証拠と基準を踏まえて交渉することで、より適切な過失割合や賠償額に近づく可能性が高まります。

もうひとつは、精神的な負担が軽くなることです。相手方保険会社とのやりとりを代理人に任せられるため、治療や生活に専念しやすくなります。

費用面では、ご自身やご家族の自動車保険に「弁護士費用特約」が付いている場合、その特約から費用がまかなわれ、自己負担なしで依頼できるケースが多くあります。

なお、被害者にまったく過失がない(10対0の)事故では、ご自身の保険会社による示談交渉の代行サービスが使えません。こうしたケースでは、弁護士に依頼する意義がより大きくなることがあります。

>弁護士に依頼するメリット

まとめ|北九州で過失割合にお悩みなら当事務所へ

過失割合は、過去の裁判例にもとづく基準や、事故ごとの修正要素によって決まっていくものです。

保険会社から提示された過失割合は、必ずしも適正とは限りません。納得できないときは、すぐに合意せず、客観的な資料を集めて妥当性を確かめることが大切です。

過失割合が10%変わるだけで、最終的に受け取れる金額が数十万円〜数百万円単位で変動することもあります。

おりお総合法律事務所では、北九州を中心に600件以上(2025年時点)の交通事故相談をお受けしてきました。過失割合の妥当性や、増額の見込みについて、弁護士が具体的にご説明します。

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交通事故の過失割合に関するよくある質問

Q1. 保険会社が提示した過失割合は、後から変更できますか?

変更できる可能性があります。保険会社に提示された割合は合意のための「目安」であり、法的に確定したものではありません。

ドライブレコーダーの映像などの新たな証拠が見つかったり、修正要素の適用が認められたりすれば、交渉や裁判を通じて見直されることがあります。納得できない場合は、すぐに合意せず内容を確認することをおすすめします。

Q2. 過失割合が10%違うと、賠償金にどれくらい影響しますか?

損害の規模が大きいほど、影響も大きくなります。たとえば全体の損害額が1,000万円の場合、過失割合が10%(1割)変わると、受け取れる賠償額はおおむね100万円変動する計算になります。

このため、過失割合をめぐって当事者の主張が対立することは少なくありません。具体的な金額は事案により異なります。

Q3. 過失割合の交渉を弁護士に依頼すると費用はかかりますか?

ご自身やご家族の自動車保険に「弁護士費用特約」が付いていれば、その特約から費用がまかなわれ、自己負担なしで依頼できるケースがほとんどです。

まずはご自身の保険内容を確認してみてください。特約がない場合の費用については、相談の際に弁護士へ直接ご確認いただくのが確実です。

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